――国生み神話
・「おのころの国成り、この国におりまして あめとの御柱(みはしら)見立て給ひき。玆に(ここ)に伊邪那岐命(いざなぎのみこと)伊邪那美命(いざなみのみこと)島生み給ひき。
初めに、水蛭子(ひるこ)、淡島(あわしま)、生み給ひき。この御子、国のうちにかくれ給ひければ、次にのりごちてのち生み給へる御子、淡道之穂之三別島(あわじのほのさわけしま)、伊予の二名島(いよのふたなしま)、この島、愛媛(えひめ)、飯依比古(ひひよりひこ)、大宜都比売(おおけつひめ)、建依別(たてよりわけ)と云ふ。
次、隠岐の三子島(おきのみつこしま)、天之忍許呂別(あまのおしころわけ)。
次、筑紫島(つくししま)、この島、白日別(しらひわけ)、豊日別(とよひわけ)、建日向日豊久土比泥別(たけひむかひとよくづひぬわけ)、建日別(たてひわけ)。
次、伊伎島(いきしま)、天比登都柱(あめのひとつはしら)。
次、津島(つしま)、天狭手依比売(あめのさてよりひめ)。
次、佐渡島(さとしま)。
次、大倭秋津島(おおやまとあきつしま)、天津御空豊秋津根別(あまつみそらとよあきつねわけ)、
次、吉備之児島建日方別(きびのこしまたてひかたわけ)。
次、小豆島(あづきしま)、大野手比売(おおぬてひめ)。
次、大島大多麻流別(おおしまおほたまるわけ)。
次、女島(ひめしま)、天一根(あめひとつね)。
次、知詞島(ちかのしま)、天忍男(あめのおしを)。
次、両児島(ふたこしま)、天両屋(あめふたや)、
二島(にしま)、八島(やしま)、六島(むしま)、合せて十六島生み給ひき。次にまたのり給ひて、大島、小島、生み給ひき。
淡路島(あわじしま)、二名島(ふたなしま)、おきの島、筑紫の島(つくしのしま)、
壱岐の島(いきのしま)、津島(つしま)、佐渡の島(さどのしま)、大倭島(おおやまとしま)、児島(こじま)、小豆島(あづきしま)、大島(おおしま)、女島(ひめしま)、なかの島、二子島(ふたこしま)の十四島、島生みましき。次に、いぶきいぶきて、御子神 生み給ひき。
大事忍男神(おほことおしをのかみ)、大事忍男神(オホコトオシヲノカミ)、石土毘古神(いしつちひこのかみ)、石土毘古神(イシツチヒコノカミ)、石巣比売神(いしすひめのかみ)、石巣比売神(イシスヒメノカミ)、大戸日別神(おほとひわけのかみ)、大戸日別神(オホトヒワケノカミ)、天之吹男神(あめのふきをのかみ)、天之吹男神(アマノフキヲノカミ)、大屋毘古神(おおやひこのかみ)、大屋毘古神(オオヤヒコノカミ)、風木津別之忍男神(かさけつわけのおしをのかみ)、風木津別之忍男神(カサケツワケノオシヲノカミ)、海神(わたのかみ)、海神(ワタノカミ)、大綿津見神(おほわたつみのかみ)、水戸之神(みなとのかみ)、水戸の神(ミナトノカミ)、速秋津比神(はやあきつひのかみ)、速秋津比売神(はやあきつひめのかみ)、速秋津比売神(ハヤアキツヒメノカミ)、風神(かぜのかみ)、風神(カゼノカミ)、志那都比古神(しなつひこのかみ)、木神(きのかみ)、木神(キノカミ)、久久能智神(くくのちのかみ)、山神(やまのかみ)、山神(ヤマノカミ)、大山津見神(おほやまつみのかみ)、野神(ぬのかみ)、野神(ヌノカミ)、鹿屋野比売神(かやぬひめのかみ)、野椎神(ぬつちのかみ)、鳥之石楠船神(とりのいわくすつねのかみ)、天鳥船神(あめのとりふねのかみ)、大宜都比売神(おほけつひめのかみ)、大宜都比売神(オホケツヒメノカミ)、火之夜芸速男神(ひのやきはやをのかみ)、火之煇比古神(ひのかがひこのかみ)生みましき。速秋津日子(はやあきつひこ)、速秋津比売(はやあきつひめ)、二柱の神 川海(かわうみ)に因(よ)りもちわけ、ことわけて、生ませる神、沫那芸神(あわなぎのかみ)、沫那美神(あわなみのかみ)、頬那芸神(つらなぎのかみ)、頬那美神(つらなみのかみ)、天之水分神(あめのみくまりのかみ)、国之水分神(くにのみくまりのかみ)、天之久比奢母智神(あめのくひさもちのかみ)、国之久比奢母智神(くにのくひさもちのかみ)、次に、大山津見神(おほやまつみのかみ)、野椎神(ぬつちのかみ)の二柱神、山野(やまぬ)に依りもちわけて、ことあげて生みませる神、天之狭土神(あめのさつちのかみ)、国之狭土神(くにのさつちのかみ)、天之狭霧神(あめのさぎりのかみ)、国之狭霧神(くにのさぎりのかみ)、天之闇戸神(あめのくらとのかみ)、国之闇戸神(くにのくらとのかみ)、大戸惑子神(おほとまどひこのかみ)、大戸惑女神(おほとまどひめのかみ)、大戸惑子神(オホトマドヒコノカミ)、大戸惑女神(オホトマドヒメノカミ)
生みましき、伊邪那美神(いざなみのかみ)やみ臥(こや)しまして、たぐりになりませる神、金山比古神(かなやまひこのかみ)、金山比売神(かなやまひめのかみ)、屎(くそ)になりませる神、波仁夜須比古神(はにやすひこのかみ)、波仁夜須比売神(はにやすひめのかみ)、尿(ゆまり)に成りませる神、弥都波能売神(みつはのめのかみ)、和久産巣日神(わくむすびのかみ)、この神の御子、豊宇気比売神(とようけひめのかみ)と申す。
ここに伊邪那美神(いざなみのかみ)、火の神 生み給ひて、ひつちとなり成り給ひて、根の神の中の国に神去り給ひき。ここに伊邪那岐神(いざなぎのかみ)泣き給ひければ、その涙になりませる神、泣沢女神(なきさわめのかみ)、ここに迦具土神(かぐつちのかみ)斬り給へば、その血 石にこびりて、石析神(いわさくのかみ)、根析神(ねさくのかみ)、石筒之男神(いわつつのおのかみ)、雍瓦速日神(みかはやひのかみ)、樋速日神(ひはやひのかみ)、建御雷男神(たけみかつちおのかみ)、建布都神(たけふつのかみ)、豊布都神(とよふつのかみ)、御刀(みはかし)の手上(たかみ)の血、闇於加美神(くらをかみのかみ)、闇御津羽神(くらみつはのかみ)、ここに殺されし迦具土(かぐつち)の御首(みかしら)に成りませる神、正鹿山津見神(まさかやまつみのかみ)、御胸に於藤山津見神(おとやまつみのかみ)、腹(みはら)に奥山津見神(おくやまつみのかみ)、陰(みほと)に闇山津見神(くらやまつみのかみ)、左の御手に志芸山津見神(しきやまつみのかみ)、右の御手に羽山津見神(はやまつみのかみ)、左の御足に原山津見神(はらやまつみのかみ)、右の御足に戸山津美神(とやまつみのかみ)、成りましき。ここに斬り給へる御刀(みはかし)、天之尾羽張(あめのおはばり)、伊都之尾羽張(いづのおはばり)、と云ふ。ここに妹(いも)恋しまし給ひて根の国に追い往(い)で給ひき。」(日月の巻)
――黄泉平坂の戦い
・「ここに伊邪那美の命 語らひつらく、あれみましとつくれる国、末だつくりおへねど、時まちてつくるへに、よいよ待ちてよと宣り給ひき。ここに伊邪那岐命、みましつくらはねば吾とつくらめ、と宣り給ひて、帰らむと申しき。
ここに伊邪那美命 九(こ)聞き給ひて、御頭(みかしら)に大雷(おおいかつち)、オホイカツチ、胸に火の雷(ホのいかつち)、ホノイカツチ、御腹には黒雷(くろいかつち)、黒雷(クロイカツチ)、かくれに折雷(さくいかつち)、サクイカツチ、左の御手に若雷(わきいかつち)、ワキ井カツチ、右の御手に土雷(つちいかつち)、ツチイカツチ、左の御足に鳴雷(なるゐかつち)、ナルイカツチ。右の御足に伏雷(ふしいかつち)、フシ井カツチ、なり給ひき。
伊邪那岐の命、是見(こみ)、畏みてとく帰り給へば、妹伊邪那美命は、よもつしこめを追はしめき、ここに伊邪那岐命 黒髪かつら取り、また湯津々間櫛(ゆつつまぐし)引きかきて、なげ棄(う)て給ひき。伊邪那美命 二(つき)の八くさの雷神(いかつちかみ)に黄泉軍(よもついくさ)副(そ)へて追ひ給ひき。ここに伊邪那岐命 十挙剣(とづかのつるぎ)抜きて後手(しりへて)にふきつつさり、三度 黄泉比良坂(よもつひらさか)の坂本に到り給ひき。坂本なる桃の実一二三(ひふみ)取りて待ち受け給ひしかば、ことごとに逃げ給ひき。ここに伊邪那岐命 桃の実に宣り給はく、汝(みまし)吾助けし如、あらゆる青人草の苦瀬(うきせ)になやむことあらば、助けてよと宣り給ひて、また葦原の中津国にあらゆる、うつしき青人草の苦瀬に落ちて苦しまん時に助けてよとのり給ひて、おほかむつみの命、オオカムツミノ命と名付け給ひき。ここに伊邪那美命 息吹き給ひて千引岩(ちびきいわ)を黄泉比良坂に引き塞(そ)へて、その石なかにして合ひ向ひ立たして つつしみ申し給ひつらく、うつくしき吾が那勢命(なせのみこと)、時廻り来る時あれば、この千引の磐戸、共にあけなんと宣り給へり、ここに伊邪那岐命しかよけむと宣り給ひき。ここに妹(いも)伊邪那美の命、汝(みまし)の国の人草、日にちひと死(まけ)と申し給ひき。伊邪那岐命 宣り給はく、吾は一日(ひとひ)に千五百(ちいほ)生まなむと申し給ひき。この巻二つ合して日月の巻とせよ。」(日月の巻)
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