死人に鞭つ

 これも矢張り私の妻が胃痙攣(けいれん)を起した時の事、胃部の激痛のためノタ打廻るのである。早速私は胃部に向って治療を加えたところ、痛みは緩和されたが全く去らない。然るに痛みの個所は一寸位の円形で、漸次上方へ向って進行しつつ咽喉部辺に来たと思うや、妻は、「モウ駄目だ。」と叫んだ。そこで私は、「これは憑霊(ひょうれい)だな。」と思ったので、「お前は誰だ?」と()くと、憑霊は言わんとしたが口が切れない。(そこ)で私は、「三月ほど前に脳病で死んだの〇〇霊ではないか。」と気がついたから訊いたところ、「そうだ」というので、それから種々の手段で聞質(ききただ)した結果、憑霊の目的は、私がその霊の生前の悪点(あくてん)を人に語った事が数回に及んだので、憑霊は、「是非それをやめてくれ。」と言うのである。私は謝罪し今後を誓約したので、霊は喜んで感謝し去った。去るや否や忽ち平常通りとなったのである。そうして昔から死人に鞭打(むちうつ)つなと言う事があるが、全くその通りと思ったのである。

 

 

Copyright © 2020 solaract.jp. All Rights Reserved.