世界夢物語(二)

 私は栄光新年号に標題の如き論文をかいたので、信者は誰も読んだであろうが、最近に至ってアイゼンハウアー元帥は、着々として凡ゆる積極的な手を打始めたのは、外電によって段々分って来たが、それについて言いたい事は、この前の夢物語にはかかなかったヨーロッパ方面についてである。

 極く最近私の懇意にしている相当名の知れた洋画家某氏が、巴里に二カ年滞在していたのが、帰朝早々訪ねて来たので、ヨーロッパ方面の事情について色々()いてみたが、私の想像と余りにピッタリしているので驚いたのである。

 というのは私がいつもいう如く、肝腎(かんじん)な英国も仏蘭西も、国民の元気のない事は本当とは思えない程である。たとえば両国民一般の思想は、いつ国がどうなろうと困らないように用意しなければならないとして、頻りに(きん)を貯蔵しているという話である。その方法としては、金の針金であって、太い細い幾種類にも作られたものが秘密に売買されているという事で、その額は大変なものだそうである。では何故針金に作るかというと、売買の際金塊では細かくするのに手数がかかるが、針金なら(はさみ)一丁で、長い短い自由に切れるからで、全く驚くの外ないのである。又新聞などにも出ている通り、勤労意欲が乏しく、遊ぶことのみ考えており、何処も彼処も娯楽場は押すな押すなの景気であるという事である。そうしてこれもよく知られている英国などの食物不足は非常なもので、日本などとは比較にならない程だそうである。では何故ドシドシ田畑を耕して作らないかと訊くと、その答が又吾々には分らない。

 というのは日本人なら一寸とした空地でも直ぐに(くわ)を入れ種を播くが、英国人はそんな事は更になく、何でも彼んでも政府の手で外国から輸入する事のみ考えているのだそうで、同国人の意気地のなさ加減は何といっていいか言葉はない。それについて、一昨年の日本綿布が英国を凌駕(りょうが)して、世界一となったというにみても分る通り、日本は綿布の生産制限をしているに拘らず、英国ランカシャは全能力を発揮しても敵わないのだから、如何に国民の活気がないかが分るであろう。そんな訳だから、軍備に対しても熱のない事夥しく、アメリカが随分金を貸し尻を叩いても、思うように躍らないにみてもよく分る。最近国務長官ダレス氏が欧州へ行き、各国を次々活を入れるべく廻ったのも無論その為である。

 処がこのような英・仏闘志のない事が、将来の重大問題を(はら)んでいる事に気附かねばならない。それはこの情勢を見越して、クレムリンは北叟笑(ほくそえ)んでいるであろうし、それと共に予定通りの作戦計画を進めているのは勿論で、時期到れば大々的ヨーロッパ侵略の挙に出るであろう。しかも成功の可能性は多分にあるとみねばなるまい。しかもソ連の狙い処は言う迄もなく英国であるから、英国の運命こそ全く風前の(とも)(しび)といえよう。その事を考えただけでも、米国は気が気ではなく、何としても欧州を思い切って強固にしなければならないと(あせ)っている訳である。然も茲に重大問題がある。それは、これから米国は中共を何としても打倒すべく大仕掛な作戦に取掛る以上、この消耗も生易いものではあるまいから、予定通り中共を破り朝鮮戦争は一段落つくとしても、その後が大変である。それは流石の米国の戦力も相当弱体化するであろうからで、万一の場合欧州援助に対し相当困難を覚悟せねばなるまい。そこをつけ込んで、茲にソ連は充分蓄えた戦力を以て欧州に(いど)みかかるのは火を睹るよりも明らかである。

 これこそ愈々第三次戦争の開幕であって、世界の檜舞台に於ての龍虎相争う大惨劇となり、何れは驚天動地の場面出現もさ程遠くはあるまいと思う。この事については今はこれだけにしておいて、情勢の進展につれてかく事にしよう。

(地上天国 四五号)

 

 

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