人間は、処世上兎角主観に捉われ勝ちで、特に女性に多いのは事実である。この主観に捉わるる事は、最も危険である。というのは自己の抱いている考え方が本当と思って自説を固執すると共にその尺度で他人を計ろうとする。それが為物事がスムースにいかない。人を苦しめるばかりでなく自分も苦しむ。
右の理によって、人間は絶えず自分から離れて自分をみる。即ち、第二の自分を作って、第一の自分を常に批判する。そうすれば先ず先ず間違いは起らないのである。これに就いて面白い話がある。それは、昔万朝報という新聞の社長であり、また翻訳小説でも有名であった黒岩涙香という人があった。この人は一面又哲学者でもあったので、私はよく氏の哲学談を聞いたものである。氏の言葉に斯ういう事があった。それは人間は誰しも生まれ乍らの自分は碌な者はない。どうしても人間向上しようと思えば、新しく第二の自分を作るのである。所謂第二の誕生である。私はこの説に感銘して、それに努力し、少なからず稗益した事は今でも覚えている。
(救世 五四号)
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