世界的名所としての瑞雲郷

 今私が造りつつある、熱海桃山の地上天国の模型は、最初は関東一と言われていたが、工事が進むにつれて日本一と言われ、最近に至っては世界一と言われている。(なる)(ほど)、宗教的建造物として世界で有名なのは、古い処ではギリシャのパルテノンであり、近世のものとしては()のローマのヴァチカン宮殿、英国のウェストミンスター寺院であろう。又寺院以外の建造物として有名なのは、中国の北京(ぺキン)(じょう)で、その規模の雄大にして壮麗(そうれい)なる建築美は、実に世界一と言ってもよかろう。そうして日本に於ては何と言っても日光(にっこう)東照宮(とうしょうぐう)で、これだけは世界に誇り得る唯一のものであろう。

 それらに比較すればこの(ずい)(うん)(きょう)は、勿論金の(かか)り方は何百分の一にも足りない貧弱なものではあるが、他の面、即ち位置と言い、全貌(ぜんぼう)と言い、周囲の景観といい、眺める限りの山水の美は、恐らく広い世界に匹敵(ひってき)するものはあるまい。これはその道の人々の異口同音(いくどうおん)称讃(しょうさん)する処である。これを詳しく書いてみるが、先ず何よりも自然に具わる環境である。勿論さ程山は高くはなく、海抜(かいばつ)(ひゃく)(メートル)位であろう。然も駅から数丁位で、徒歩で十五分、自動車で五分位であるから、便利のよい事この上もない。そうして、予定としては三期に分割(ぶんかつ)して建造する(はず)であるが、現在第一期の(ぶん)を造営中で、その敷地だけ今年(なか)ば頃に出来る予定で、一番高い所の敷地千二百坪へ間口十八間、奥行二十間三百六十坪の殿堂を建築の予定である。様式は最も近代的で、現在世界を風靡(ふうび)しつつある()のフランスのコルビュジエ式で、私はそれを一層新しい様式に設計した。屋根なし、全部白堊(はくあ)で、極端(きょくたん)簡素(かんそ)なデザインである。面白い事にはこのコルビュジエ式は日本の茶席の建築から生れたものだそうである。そうしてこの敷地の片側(かたがわ)は、高さ四間、延長(えんちょう)五十余間の石垣(いしがき)で、最早(もはや)完成しており、これだけでも観者(かんしゃ)はその壮大(そうだい)に驚くのである。

 右の殿堂を中心に、それを(とり)()いている()(ふく)せる()(やま)の自然的変化に富める曲線(きょくせん)()は、実に何とも言えない良さで、どうみても神様が準備された事を思わないわけにはゆかないのである。それら全体を(ふもと)から眺める時、恐らく(げん)()にあるを忘れ、夢の国に遊ぶ思いがするであろう。

 これに(たい)し、目下の予定としては、梅の老木百本、吉野桜百本、八重桜五十本、大躑躅(つつじ)数十本、その他沈丁花(ちんちょうげ)薔薇(ばら)、ライラック、藤、山吹(やまぶき)椿(つばき)等の(かん)(ぼく)を始め、チューリップ、ヒヤシンス、水仙(すいせん)春菊(しゅんぎく)、アネモネ、パンジー、カーネーション、シクラメン等々の草花で、(いず)れも春咲の物のみを植えるのであるから、完成の(あかつき)はその美観たるや恐らく想像もつかない程で、勿論(もちろん)世界にもないであろう。

 右は第一期分だけであるが、次いで第二期、第三期が完成する(あかつき)、世界的名所として、日本の誇りの一つとなる事は間違いないと信じている、従って観光外客は、日光の東照宮と熱海の地上天国を見なければならない事になるのは、今から期待し得らるるのである。

 最後に言いたい事は、右の如き建造物を企画(きかく)した抑々(そもそも)の目的は、私の常に言う、日本の使命は芸術国家であるとして、日本の自然美と人工美とをタイアップした処の、渾然(こんぜん)たる一大芸術品を造るにあるので、それには先ず、位置の選定(せんてい)肝腎(かんじん)である、その為日本中を踏査(とうさ)した結果、熱海こそ理想的最優秀地(さいゆうしゅうち)である事を知ったのである。言うまでもなく、気候(きこう)温和(おんわ)にして、温泉あり、山あり、海あり、島(初島及び大島)あり、海岸線の紆余曲折(うよきょくせつ)、変化に富める景観は、他に()すべきものがない。然も交通至便(しべん)なる関西と関東との中間に位し、国立公園たる箱根、伊豆半島に隣接(りんせつ)している等々、実に申分(もうしぶん)ない天与(てんよ)勝地(しょうち)である。然も、熱海中の最も風景絶佳(ぜっか)な土地二万有余坪を、次々手に入れたのである。勿論数年前の非常に安い時からであるから、全く神が遠い以前から準備された事は、一点の疑いない処で、実に地上天国の模型を造るべき条件は、(ことごと)具備(ぐび)している事が分るのである。

(救世 四九号)

 

 

Copyright © 2020 solaract.jp. All Rights Reserved.