二、彫刻

 次に彫刻の事を少し書いてみよう。昔の運慶(うんけい)左甚五郎(ひだりじんごろう)等はあまりにも有名であるが、彫刻は絵画と違い、昔から名手は非常に少なかった。

 ここには現代のみを書く事にするが、明治以後今迄に見られない隆盛(りゅうせい)となった事は、展覧会等の刺戟(しげき)(あずか)って力あった事は勿論である。先ず有名人としては、木彫(もくちょう)では石川(いしかわ)光明(こうめい)米原(よねはら)雲海(うんかい)山崎(やまざき)(ちょう)(うん)の、故人及び老大家を始め、平櫛(ひらくし)田中(でんちゅう)佐藤(さとう)朝山(ちょうざん)改め同清蔵(せいぞう)氏等が主なる人であろう。以上の内、私は田中(でんちゅう)が好きだが、近来は往年のような活気が乏しいようである。ひとり清蔵氏のみは今脂がのりきっていて、なかなか名作を出している。氏に望むらくは、満々たる野心は長所に(あたい)するが、今一段の洗煉と円熟とを期待したいのである。(まこと)に人なき彫刻界にあって、君こそは近代の名人たり得るであろう。

 銅像や塑像(そぞう)に於ては、何と言っても浅倉(あさくら)文夫(ふみお)氏に指を屈せざるを得まい。併し乍ら、同氏の技術は行く処まで行った感があるのは、私のみの見解ではなかろう。

 茲で特筆すべきは、古代に於ての仏像彫刻である。彼の法隆寺に於ける、幾多の仏像の洗煉せる技術は、千二百年以前、天平時代の作とは、どうしても考えられないのである。これを(しの)ぐべき彫刻芸術は、何時の日か生まれるであろうかを思う時、多くの期待は望み得べくもないと思わざるを得ないのである。

(自觀随談 六四頁)

  

 

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