今年の正月になってつくづく思われる事は、去年の今頃との違いさである。周知の如く、去年は朝鮮の動乱も酣にして、前途は暗雲垂れ込め、雨か風か予想すらつかない無気味な感が濃厚であったからで、それが今年に入って、その様相は緩和された事は事実である。とは言え、決して明るくなったのではない。丁度晴れもせず雨にもならず、ドンヨリした鬱陶しい曇り空のようなものである。これに就いて考えてみると、こういう訳であろう。
大体、朝鮮問題発生の原因は、言う迄もなくソ連と中共の合作であって、中心は、勿論クレムリンから出ている遠大な計画によるものであるのは言う迄もない。それを忖度してみると、先ず最初南朝鮮を一挙に攻略し、亜細亜制覇の足掛りにしようとしたのであろうが、それ程予想しなかったアメリカが案外にも真剣になって乗出し、大掛りな援助の手を伸ばし、漸次本腰になって、如何なる犠牲を払っても、中共を押込めてしまわねばならないという態度が濃厚になって来たので、さしもの中共も、この侭対抗するとしたら、余りに損害が大きくなるばかりなので、何が何でも一時的でも、食止めなければならないとしてソ連へ泣きつき、最初に打った手が、彼のマリク大使の発言であったに違いなかろう。
というわけで、勿論心から平和の考えなどある筈もなく、只時を稼ぎ乍らゆっくり計略を練り、再び起ち上る時期を待つという寸法は、容易に汲み取れる。然もソ連の計画は、極力米の力を弱らせるべく、消耗戦術をとっているのであるから、講和になって軍隊を引揚げるとしたら、意味のないことになるから、飽迄国連軍を引きつけて置いて、消耗させなければならない。という訳で、先ず当分は戦争にもならず、平和にもならないという。蛇の生殺し的戦術策を続けるであろう。そうして置いてソ連は、他の方面即ちビルマ、仏印等の中東を脅かし、次第によっては事を起すかも知れないし、又ヨーロッパの方は、常から憎んでいるユーゴー侵略も或いは考えられるし、東独逸も無気味な空気を孕んでいるし、イラン、イラク、エジプト等の問題も、直接的ではないが狙いは米国にある。というのは、英国を困らせる事で、近来英国の財政難の極度に酷いのは右の影響もあるであろう。近頃の外電によってみても、国民に対する耐乏政策なども余程深刻になったようだ。
今回チャーチル氏の米国訪問も、その点が主であるらしく、つまり経済的援助をト大統領に勧告するのであろう。これに附随した日本の中共や国府に対する問題は、附録でしかあるまい。こうみてくると、今回略々決定したという欧州軍四十七箇師を作るその軍事費の支出と言い、亜細亜に於ける朝鮮はじめ日本、中東方面を援助する費用と言い、総計すれば驚くべき莫大な額に上るであろう。従ってこれが長く続くとすれば、流石の米国も国力のマイナスは相当なものであろう。これでは全くソ連の思う壺に嵌るわけで、戦わずしてソ連は勝利の立場になるであろうし、スターリンは北叟笑み乍ら、米国の衰弱を待ちつつ軍備の充実に全力を傾けると共に、最早これなら勝利疑いなしという確信を得たが最後、猛然と立上る事になろうから、中々油断は出来ないのである。
以上は、常識的、推理的に見たままを書いたのであるが、我々宗教人としては、一般の見方とは根本的に違うのである。というのは、神の実在を信じている以上、如何なる問題でも正が勝ち、邪が負けるのは当然な帰結であるから、今米とソを比較してみる時、勝敗は言わずと知れている事で、信者はよく分るであろう。従って今後如何なる事態となっても、我々は聊かの心配も要らないのである。然もその結果、我々の理想とする地上天国、ミロクの世の出現が促進されるとしたら、信ずる者は幸いなりのキリストの聖言も、この事でなくてなんであろう。
（地上天国 三二号）
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