2.ヘン・ドンナモンジャイ

 抑々、この頃何だ彼んだと噂に(のぼ)るメシヤ教とは、一体全体どんなもんじゃい。名前からして救世教と漢字で書くんだから、東洋的と思ったら、ナーンだ! (かた)()()でメシヤ教とあるんだから、どっちが本当なんだか、サッパリ分らないと仰言るだろう。成程、御尤(ごもっとも)千万(せんばん)、それに違いは御座らぬが、今の世の中をよく見給え。和服も着れば洋服も着る、()()(しる)(たく)(あん)茶漬(ちゃづけ)も食えば、ビフテキにパンも食う、正宗(まさむね)にビール、舞踊(ぶよう)にダンス、歌舞伎(かぶき)新劇(しんげき)振袖(ふりそで)にストリップ、いくら書いてもきりがないが、これで堪能(たんのう)がいったで御座ろう。

 だから、名なんかどちらでもよろしい。何より中身が肝腎(かんじん)なんだよ。では一体、それ程立派なものなのかと仰言るだろうが、手前味噌じゃ御座らぬが、()(てき)(めっ)(ぽう)大安売(おおやすうり)じゃない、ド(えら)代物(しろもの)なんだから、吃驚(びっくり)仰天(ぎょうてん)しなさんな。と、先ずは毒気(どっけ)を抜いておいて、ボツボツ口から出まかせの()(たく)を並べてみよう。

 芝居(しばい)モドキじゃ御座らぬが、先ず口上(こうじょう)はこの位にしておいて、()てこの世の中を隅から隅迄ズーイッと見廻してみると、これはこれは、何とマア汚ねえ臭い娑婆(しゃば)だろう。何処も彼処(かしこ)(ほこり)だらけの糞だらけ、泥へ棒を突込んだような奴だらけ、夜も碌々(ろくろく)寝られない、(ごう)窃盗(せっとう)(むす)()()が、いつ(しの)んで来るかは判らない。昼間は昼までコソ泥や、(あき)()(ねら)いにチョックラ待ち、汽車や電車にウッカリ乗れば、掏摸(すり)(きん)着切(ちゃくき)りに(かっ)(ぱら)い、バスに乗ったらこれはまた、衝突(しょうとつ)転覆(てんぷく)(がけ)()ちの、川へ(はま)って大往生、テモ物騒(ぶっそう)な世の中じゃ。そうかと思や家の中でさえ、詐欺(さぎ)強請(ゆすり)やら、ハッタリ、(かた)り、タカリ、コワモテ、(おし)(がり)恐喝(きょうかつ)など次々とやって来る。又近頃は、チンピラ迄が大人(おとな)顔負(かおまけ)(すご)さぶり、そうかと思や、人身売買、パンパンガールに不良青年、()()(もの)、ヤクザに、町のボス、いくら書いても書き切れぬ。だからこの位にしておいて、これから本当のアラ探し、(ねむ)()()ましを書こうとしよう。

 (ほか)でも御座らぬ、世の中で一番頭痛の種はと言えば、言わずと知れた病気という奴、ウッカリすると、一つよりない命迄召上げるんだから、オッカナイ。オマケに不断から、人は(やまい)(うつわ)などと(おど)かされている人間共だから、血気(けっき)盛んな若者でさえ、一寸風邪でも引くとすりゃ、(じき)(あお)瓢箪(びょうたん)のブラブラ(やまい)、ヒョロヒョロするともう君は、結核という命取りなんだから気を附けろ。そうかと思や近頃は、(あぶら)()った赤ッ(つら)のドッチョイでさえ、危ないぞ、君も結核があると言われ、心細い処の騒ぎじゃない。そうかと思や熱が出て、ゴホンゴホンと来りゃもう肺炎、腰がフラつきゃ早やカリエス、ゼイゼイ言えば喘息で、ゲップが出ると胃何々、ドキドキすると心臓病と来ちゃ、花恥ずかしい(おと)女子(めご)は、先ず慢性心臓病とは、チト悪口がすぎますか。親父は親父で中風という半身不随のフラフラ病、その又女房は女房で子宮何々、卵巣何々、子供は子供で麻疹(はしか)に百日咳、(しょう)紅熱(こうねつ)にジフテリヤ、(えき)()、脳炎と、きりがない程世の中は、(やまい)神様(がみさま)大繁昌(だいはんじょう)油断(ゆだん)(すき)も出来はせぬ。テモ恐ろしい娑婆(しゃば)(てい)

 そうかと思やお偉方(えらがた)は、ヤレ瀆職(とくしょく)、ヤレ賄賂(わいろ)、やったとか取ったとか、水掛論の五月蠅(うるさい)こと、文書()(ぞう)(にせ)()(がた)、財産横領に使い込み、隠匿(いんとく)物質、(やみ)()、カツギ屋、贋札(にせさつ)使い、上から下迄、鼻もちならぬ娑婆世界。これがホントの(すえ)の世か。昔の人の言う通り、犬猫同然、虫ケラ同然の人間ばかり。処が、(くそ)(つぼ)にいる蛆虫(うじむし)は慣れっこになっちゃって、別段汚ないとは思わないのと同様、お気が附かないんで御座んしょう。どうです皆さん、こんなにも思い切っての扱下(こきおろ)しに、(あき)れ返ったで御座んしょう。そこで此奴怪しからんと、堪忍(かんにん)(ぶくろ)()を切って、文句の一つも言いたいだろうが、一寸待て。自体(じたい)拙者は生まれついての正直者、只アケスケにありのまま、見たまま言うので、痛い御方も御座ろうが、脛傷(すねきず)だらけじゃ仕方があるまい。頭掻き掻き、(わき)の下の、汗をフキフキ苦笑(にがわら)い、フフンと言って横向けば、それでお()(まい)、それっきり、後白波と消えちまい、浜の松風音ばかし、などといい気な拙者で御座る。

 ザッと書いてもこれ位だとしたら、御世辞(おせじ)にも、結構な世の中とは申せまい。処がお偉方達は、真赤(まっか)になって仰言るだろう。〝貴様の目玉は節穴か、田螺(たにし)同然の明盲(あきめくら)。これ程結構な世の中を、悪く言うとは怪しからん奴〟と言うかも知れないが、拙者はそんな()(たく)(せん)、百も承知之(しょうちの)(すけ)なんだ。処がまだまだ、今少し、()耳障(みみざわ)りでは御座ろうが、聞いて貰いたい事がある。外でも御座らぬ、抑々拙者は先祖代々の江戸ッ子で、口から先へ生まれた阿呆、口車ならば直ぐに乗り、滑り出したら大脱線、止めて停まらぬ威勢のよさ。これが江戸ッ子の持前(もちまえ)で、もしも森の石松君生きて居たなら、オイお(めえ)、寿司食わネエかと言うだろう。アプレゲールの江戸っ子は、拙者で御座ると言いたいね。低い鼻をば拳固(げんこ)(こす)り、啖呵(たんか)を切って、これから書き出す様々は、オッタマ()ないよう、(ふんどし)を、しっかり締めてお聞きなせえ。セパードのワン公じゃゴワせんが、三角耳をオッ立てて、ドイツもコイツも耳の穴、よくカッ穿(ぽじ)って、お聞きなすっておくんなせい。今度愈々、汚ねえ娑婆を、綺麗サッパリ石川で、(けつ)洗ったよう洗い浄めてしまうんだ。何と小気味よいでは御座らぬか。と言うと、拙者を市役所の清掃人夫と間違えちゃ困るが、実はブチまけて言えば、天の神様この度愈々地に(くだ)り、掃除万端(ばんたん)拙者にお委せなすったんだから、何と素晴しいじゃ御座んせんか。ヘン、ドンナモンジャイと言いたいが、それ処か〝よし来た〟と(ねじり)鉢巻(はちまき)(しり)引ッツパショリ、ウンと気張って、愈々これから踊り出すという寸法と来ているだから面白い。

 処が、今度の大掃除は、春秋二回の縁の下の掃除なんかとは、月とスッポン程の大違い、虫ケラ共を(つま)み出し、火で焼き灰の粉にして、西の海へとサラリと捨てりゃ水の泡、消えて跡なくなりにけり、だとしたら大変だ、ウッカリしては居られまい。そこで神様、可哀想だから助けてやれとの仰せだが、それそこが問題なんだよ。何しろ不断から、勿体なくも大神様に、悪口(あっこう)雑言(ぞうげん)並べたり、尻を向けたりした(ばち)が、溜り溜ったドー(くず)人足(にんそく)、仕方泣くなく閉口(へいこう)頓首(とんしゅ)、逆さになってお詫びすりゃ、勘弁(かんべん)して、下さるか下さらないかは分らない。先ず何よりも今直ぐに、メシヤ教とへ来る事だ。すれば拙者は、お前等の、罪や穢れのお詫びして、助けてやらない事もない。何と有難い宗教では御座らぬか。どうじゃ、恐れ入ったか、人間共よ。

(栄光 八九号)

 

 

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