3.結核なんか何でもない

 今最も(やかま)しく言われている結核問題を、訳なく解決する方法を教えて上げよう。併しこの方法たるや、実に()(そう)(てん)(がい)で、人間共が聞いたら、吃驚(びっくり)仰天(ぎょうてん)するに違いない。余ッ程腹帯(はらおび)を締めてかかるんだね。

 前口上(まえこうじょう)はこの位にしておいて、愈々本文に取掛るが、先ず最初、一発の原子爆弾を投げつけよう。それは、結核を無くす方法とは、出来るだけ風邪(かぜ)を引くんだ。ドーダ、驚いたろう。処がだ、これが真理なんだから、文句は言えないよ。そこで本当に真理か真理でないかをお目に掛けるが、何よりも、アレ程お偉方が一生懸命になって、ドエライ金を使って、ヤッサモッサ骨折っても、結核はチョッとも減らないばかりか、来る年も来る年も結核問題の出ない事はないじゃないか。若し今迄のやり方が理窟に合っているとしたら、結核患者は段々減って、療養所にはペンペン草が生え、片ッ端から売り物に出なきゃならない筈じゃ御座らぬか。処が(およ)そアベコベで、療養所が足りない、ベッドが足りないと、ブツブツ言っている有様だ。これだけでも、気の()いた人間なら、もうお気が附きそうなものだが、余ッ程唯物科学嬢に首ッタケだと見えて、相も変らずなんだから、甚だ失礼かも知れないが、何とマア頭の悪いお方ばかりと言いたいよ。

 すると御偉方は(おっ)(しゃ)るだろう。〝何だッ! 風邪を引くのがいいだなんて、此奴(こいつ)飛んでもない事をぬかしやがる。昔から風邪は万病(まんびょう)の本と言って、風邪を引くのは結核の始まりなんだによって、そんな理窟を言う奴は怪しからん〟と、目の玉をムクに違いない。併し此方(こちら)も負けないよ。先ずお聞きするが〝一体風邪とは何の原因ですか〟と聞くと、グーの音も出ず、頭掻き掻き〝実はソノー、風邪という病は、まだ分っていないんだよ〟と言訳(いいわけ)なさるに決っているよ。

 すると此方でも、ヘン、風邪なんかのケチな病ナンザー、トウの昔からチャーンと分かっているんだから、今迄もチクチク知らせてやったが、馬の耳へ念仏(ねんぶつ)で、相変らずの(とう)(へん)(ぼく)なんだから、仕方なしに怒られるのを承知で教えてやるんだから、有難いと思って、菓子折の一つも届けて貰わなくちゃ、とは言わないよ、只分ればそれでいいんだから。と言って、()てこれから、種明(たねあか)しに取掛ろう。

 昔から、自惚(うぬぼれ)(かさ)()のない奴はいない、と巧いことをぬかした奴がいた。此奴(こいつ)中々隅へおけん奴だよ。何故って、全くその通りなんだ。だが瘡気はチト失礼な言い方だよ、本当は瘡気じゃない、いろんな毒なんだ。その毒とは、作物に()っかける肥料の毒や、薬に含まれている余毒、オット、ドッコイ、食い物には毒はないから安心さ。処が始末の悪い事には、そんな毒が身体中方々へ固まるんだ。肩や(くび)が凝ったり、頭が痛かったり、重かったりするのはそれなんだ。だが、それでは仕事が出来ないから、その毒を身体の外へ押出してしまうように、チャンと神様が人間を御造りになったんだから、大したもんだろう。そこで神様は、先ず熱というものを出して、毒を溶かし液体になさる。それが青洟や(みず)(ぱな)や、盗汗(ねあせ)や、腹下(はらくだ)し、真ッ赤な小便なんだから、出る程いいに決っている。それで身体の掃除(そうじ)が出来るだから、何と(うま)く出来ているでは御座らぬか。この掃除が風邪という奴なんだから、風邪を引く程掃除が出来て、血が綺麗(きれい)になり、健康になるんだから、風邪程結構なものはないわけじゃないか。処が人間様も余ッ程血の(めぐ)りが悪いと見えて、そんな簡単な理窟が分らない処か、(かえ)ってアベコベに考えてしまったんだから、厄介だ。折角(せっかく)神様が、イヤ御自身様の体の方で清潔法(せいけつほう)を始めようとすると、コリャ大変だと、それを()めようとしたり、平常(へいじょう)から掃除が始まらないよう色々な工夫をする。つまり毒を出さないようにするんだから、トンチンカンも(あき)れカエルの(ひき)(がえる)だよ。こんな間違った事を、長い間いいと思ってやって来たんだから、万物の霊長様も愈々以て馬鹿野郎、オットこれは失礼、哀れ憫然(びんせん)の代物だよ。処がそれどころじゃない。折角掃除が始まると、それを止めようとして薬を使う。薬には毒が含まれているから、マア毒を追加するようなものだ。そこで益々(ますます)毒が増えるから、御自分のお(なか)の虫が承知しない。こう毒が溜ったんじゃ、苦しくてやり切れないからと、一ペンに大掃除を始めてやれという、これが肺炎という奴なんだ。何よりこの病気と来ると、痰がウンと出るから分るだろう。今までチビチビ毒を出していれば、楽に掃除が出来るのを、一々(いちいち)停めるので、ウンと溜った奴が、一ペンに出るんだから、つまり借金を月賦(げっぷ)で返せば楽なのを、払わずに延ばしておいた(むく)いで、(がん)()一度に返すんだから、骨が折れる筈だよ。処が困る事には、肺炎という元利一ペンに返す力のない人は、仕方がないんだからチビチビ()(なが)に返すんだ。これが即ち結核という代物なんだ。どうだ、相分ったか。

 今一つ、モッと吃驚(びっくり)する事があるから、よく目のクリ玉をヒンむいて見てみなさい。先ず初め、風邪という清潔法(せいけつほう)が始まるとなると、何しろ身体中に固った毒が、今言ったように熱で溶けた痰、(はな)(じる)、汗などの液は、肺を目掛(めが)けて集って来る。処が問題は、その時だ。先ずお医者さんに()てもらうと、先生は聴診器(ちょうしんき)を胸に当てて、額に八の字を寄せて難かしい顔をする。それはゼイゼイが聞えるからだ。コリャ怪しいと、レントゲン写真を撮ると、雲が写るので、これは結核の初期かも知れないと思い、絶対安静、服薬、注射、湿布(しっぷ)など、あの手この手で、折角(せっかく)出ようとして、肺に集った毒液を、出ないように固めにかかる。それで、お(あつら)え通りに固まると、これで愈々本格的結核になりました、と仰言る。

 サアー、此処のところをよく考えてみて貰いたい。放っておけば、痰や(はな)(みず)、汗なんかになって出てしまい、ピンピン達者(たっしゃ)になる処を、アベコベにするんだから、可哀想なのは病人だよ。だから最初、肺には毒液が一時的(とどま)っているだけで、肺は何ともないんだが、お医者さんは痰の(かたま)りは、肺の中に生まれたように錯覚(さっかく)する。丁度、東京駅を出発した名古屋行の汽車が、一時熱海へ止ったのを、熱海が出発駅と間違えるようなものだ。然も名古屋へ行かないように、熱海で止めてしまうんだから、何と変テコでは御座らぬか。つまり毒液を、肺の中へ固めてしまうのがいいと思うんだから、ヤリ切れない。然も固った痰が古くなるから虫が()く。それが結核菌という奴さ。何しろ不潔物(ふけつぶつ)に、体温という丁度よい温度と来ているから、虫が湧くのは当り前だよ。そこで又々()ると、肺の中には固まりがあり、菌があるので、これで愈々第三期の症状で御座ると宣告する。何よりもお医者さんは、病気を固めると仰言るじゃないか。してみれば、結核は人間が作り上げた事になろう。これでは減る処か、益々増えるというのが、何よりの証拠では御座らぬか。

 どうだ、驚いたろう。併しこんな事を言うと、どんなに怒られるか判らないが、拙者も悪気(わるぎ)で言うのじゃない。人を助けたい一念(いちねん)なんだから、ご容赦(ようしゃ)ご容赦。

 今に、拙者の説が大発見として、世界中大騒ぎをされる時が来るから、その時になって()(ひざ)(もと)の日本人が、ああそんな事は、知らなかったではミッともないから、今の(うち)に知らしてあげるんだ。これを読んで変な説だなどと、鼻の先で笑わずに、一生懸命研究してみなさい。と、マアザッとこういうわけなんで御座るよ。

(栄光 九〇号)

 

 

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