< 新約聖書(福音書)の編纂 >

  • キリスト教各派で採用している旧約聖書

〝約〟は、約束・契約。旧約とは、神とユダヤ民族との約束を意味し、もともとはユダヤ教の聖典だったが、のちのキリスト教にも採用された。

神とイスラエルのとの契約は、イスラエルにとっては唯一で、永遠に不変の契約とみなされて、現在のイスラエルでも代わらない。ユダヤ教、キリスト教とも、信仰の源流はイスラエル民族の太祖アブラハムから始まり、彼の信仰が「聖書」の宗教の原型となる。

ユダヤ教では「旧約」の中心は律法(モーセ五書)であり、他の「旧約」各書がこれにつぎ、さらにそれを細かくするものとして「タルムード」と称される経典が続くとされる。ユダヤ教は「新約」を排除、拒否しているため、「新約」はなく、聖書を「旧約」と呼ぶことはない。

旧約聖書の39巻は、パレスチナのユダヤ人によってAD1C末に確定され、現在、ユダヤ教の正典となっている。―― 現代のプロテスタント教会が採用。

エジプトのユダヤ人は、ギリシャ語しか残っていない書(第2聖典)を加え、46とし、独自の聖書を編纂している。―― 現代のカトリック教会が採用。

1世紀末、聖書の正典目録を定める会議で、70人訳は正式な正典と認められず、これには含まれるがヘブライ語訳には含まれない書が生まれ、「旧約聖書外典」となった。続編とも言い、カトリックでは第2正典と言われる。これらは、BC後から4世紀ころに成立した民間逸話。

  • 「新しい契約」という考え

新約とは、神がイエスによって全人類と結んだ契約の意。イエスの教えは、しばしば「福音」と言われ、貧しく不幸だが福音に忠実な人々は祝福を受け、神による解放の約束によって、生きる苦しみに立ち向かうことができるとする。

パウロは、イスラエルの民を通じて人類に与えられた契約は、イエス・キリストが現れる前までの準備段階として示された「古い契約」(不完全な契約)であり、イエス・キリストの十字架上での死と復活を通して成就された救済の出来事こそが「新しい契約」(完全な契約)であると主張。

契約更新の概念を導入することで、新旧二種類の契約という二段階契約説を主張するパウロの考えは、イスラエルと神との契約書とみなされてきた聖書に、序列を持ち込んだ。その結果、旧約聖書の上に新約聖書を積み上げ、両者を全体として「聖書」と呼ぶようになった。

 

  • 福音書の意図

「福音書」は、イエスのメシア性を認めようとしないパリサイ派などに代表される正統派のユダヤ教徒たちに対して、イエスがキリスト(メシア)であることを弁証しようとする明確な目的意識をもって執筆、編纂された。

「キリスト」とはヘブライ語メシア(油を注がれた者)のギリシア語訳で、イエスとは「神は救い」の意味。

※ 「タンナイーム」のパリサイ派は、ユダヤ教キリスト派の人々から論破すべき最大の論争相手とみなされていたが、「イエスの活動していた当時のガリラヤ湖一帯にはパリサイ派は既に存在していなかった」(J・ニューズナー)という指摘もある。

※ タティアノスは、さまざまな福音書を書き直して一つの文書に統合することを考えたが、エイレナイオスは文書に手をつけず、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネによる福音書だけを集めて、これを完結した福音書とした。中でもヨハネは今日呼ばれているような4番目ではなく、第一にして最も重要とした。そしてエイレナイオスは、「ヤコブの秘書」「マグダラのマリアによる福音書」などの〝出典が疑わしく正統ではない〟文書を切り倒し、この四本の柱だけを残した。この四福音書は以後も、正統派の教義の拠りどころとなった。

初期キリスト教徒が、キリスト教の創始者と初代教会について記した書は、紀元後1C後半~2C頃にかけて編纂され、393年、27巻の文書が正典として確認された。その4年後の第3回カルタゴ会議において正典目録が公布され、27の文書の正典性が確立、将来これ以上のものが新たに追加されることを禁じた。これが、その後のキリスト教を一定の型にはめることになる。

今日、新約聖書ギリシャ語資料として世界中に広く使用されているのは、ネストレ版ギリシャ語資料。現在、改訂27版(1993年)。

  • 福音書によって異なる内容

 ・イエスについて

   マタイ――ダビデからソロモンへと流れる王家の血筋を引く高貴な人物。

   ルカ――イエスの家柄はもっと低い。

   マルコ――貧しい大工の息子。

 ・イエスが生まれたとき

   マタイ――博士たちがイエスを訪ねた。

   ルカ――羊飼いが訪ねた。

 ・イエスは死ぬ間際

   マルコ、マタイ――「わが神、わが神、なぜ私をお見捨てになったのですか」と漏らした。

   ルカ――「父よ、私の霊を御手にゆだねます」

   ヨハネ――「すべてが終わった」

  • 写本

51-100年の間にギリシャ語で書かれたが、原本はなく、5000を超える写本が残るだけ。パピルスに書かれた一番古いもの(小断片)はエジプトで発見されたが、完全な形の最古の新約聖書は4C~5Cの羊皮紙の大文字写本のみ。これらの写本をもとに、復元作業が継続的に行われてきた。

――代表的な写本――

・ヴァチカン写本(4C、ヴァチカン図書館)

・シナイ写本(4C、シナイ山のカタリナ修道院で発見された、大英博物館)

・アレキサンドリア写本(5C)

・エフラエム写本(5C)

「新約聖書」に記されている言語(コイネー・ギリシャ語)は、プラトンやアリストテレスなどが使っていた古典ギリシャ語ではなく、ヘレニズム時代の通俗的語ギリシャ語で、主に商業用語として、イエス時代をはさんだ数世紀間に、東部地中海沿岸一帯を中心として広く使用されていた。

  • 聖書の翻訳

現在、495カ国語に訳されている新約聖書が最初に翻訳されたのは、2世紀。

ラテン語、シリア語(2C)、コプト語(3C)、ゴート、グルジア、エチオピア語(4C)、アルメニア語(5C)、アラビア、中国、アングロサクソン語(8C)、ドイツ、スラブ、フランク(9C)…。

聖書がはじめて印刷されたのは、1456年。

―― 新約聖書(全27巻)の構成 ――

―― 新約聖書(全27巻)の主な内容 ――

 

 

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