農業の大革命(昭和二十四年発表)

農業の大革命  

 清潔で心から楽しめる 家庭菜園の無肥科栽培

 無肥料栽培については地上天国創刊号に詳細発表したのであるが、この時の記事は農耕者を目的としたものである。今回は家庭菜園を主にして説明するのである。

 専門である農業者が無肥料栽培において素晴しい好成績を挙げている事は、地上天国および本紙にその報告を載せてあるから、読者は大体理解出来たと思うが、特に家庭菜園に至っては専門家でない素人が行うのであるから、無肥料栽培の福音は暗夜に燈火を得たるごとき喜びであろう事は断言し得るのである。

 家庭菜園においては肥料として今日まで主に人肥を使用したのであるが、この糞尿を取扱うことは悪臭は勿論、種々の点において堪え難い程の苦痛であろう。それが無肥料となれば全然そういう苦痛はなく実に清潔で、心から楽しんで栽培が出来る訳である。しかも有肥料の時よりもその成績は格段に良く、しかも手数も大いに省けるのであるから実に一挙両得である。試みに有利な点を左に列記してみよう。

一、肥料は堆肥のみにてよく、人肥の如き不快がなく手数も省ける事

二、すべての野菜は質が良く、有肥野菜と比較にならぬ程の美味である

三、総体大きく、数量も増加する

四、害虫発生は有肥栽培に比し何分の一に減少するから消毒薬の必要など無論ない

五、寄生虫特に回虫など伝播の憂なき事

 右の外種々の効果はあるが、主たるもののみを書いたのである。素人菜園の多くは土地が狭く、米麦は作らず殆んど野菜のみであろうから、個々の野菜に就いて吾等が実験済みのものを説明してみよう。

 馬鈴薯は色真白にてネットリし、香気強く味覚をそそる事夥しい。しかも素人栽培の場合よく薯(いも、芋?)つきが悪いとか、育ちが悪いなどという事は肥料の為であるから、無肥なら芋つきがよく数も多いのである。

 玉蜀黍(とうもろこし)は茎太く、葉色は真青で丈高く、一見普通より巨大である、実は太く長く、豆粒は密集整列しており、柔らかく甘く、その美味なる事誰しも驚くのである。

 大根は色白く肌理細かく、普通より長く、太く、舌触りネットリとして断然美味である。よく大根にはガリガリやスがあったりするのは肥料の為である。

 すべての漬菜類、菠薐草(ほうれんそう)、京菜、白菜、キャベツ等も香気強く、軟らかく大きく、味覚をそそる事夥しい。昨年暮素人が作ったもので、白菜一個一貫五百匁のもの三個を見せに来た人がある。今迄見た事もない程の巨大であった。

 豆類も勿論成績は良いが、特に枝豆の如きは背丈短く、葉は小さく二倍位の収穫あり、四粒のもの多く、一粒は殆どないくらいである。豆類は有肥料に於いては背丈長く、葉が大きく花落ちも多く、実りが少ないが、無肥料の場合は五割ないし十割の増産は確実である。

 茄子は色好く皮柔らかく香気強く、見た眼といい味といい、一度無肥料の茄子を食したものは、有肥の茄子は到底食す気にはなれないのである。

 長葱、玉葱、トマト、南瓜、瓜類等は略す事とするが、勿論優秀で、特に南瓜の如きは舌触りネットリとし、甘味等何ともいえない味である。

 芋類、特に薩摩芋はその巨大なる事驚くべきで、長く掘らずにおくと薩摩芋とは思えぬ程の大きさになるのである。

 果樹も同様で、特に柑橘類、柿、桃等は有肥のものとは較べものにならない程の美味である。

 以上は極く概略であるが次に堆肥の使用法とその原理について説明してみよう。

 無肥料栽培に於いて必要なものとしては堆肥であるが、堆肥にも草葉と木の葉と二種あり、草葉は土に混ぜるのに適し、木の葉は床を作るのに適している。これについて無肥料栽培の効果とその原理をかいてみよう。

 従来の有肥料と吾らの唱える無肥料との差別はどういう訳かというと、元来土壌とはあらゆる植物性食糧を生育する為のものとして造物主が造ったところの神秘幽玄な物質である。故に土壌の活力をより旺盛に発揮させる事こそ土壌本来の目的に叶うので、その理に不明であった昔人は、何時の頃からか誤った解釈の下に肥料を用いるようになったのである。肥料を用いる結果として、土壌本来の生育力は失われ土は死ぬのである。

 そこで肥料によってそれを補おうとし矢鱈に肥料を施す結果、植物は肥料中毒となる。日本の土は痩土化したといわれるが、勿論肥料の為で、特に近来化学肥料を用いる結果、痩土化に拍車をかけたのである。何よりの証拠は稲作等が収穫減少の場合客土をする。それによって一時収穫は増すのである。その場合農民の解釈は、曰く「長年の栽培によって土の肥料分を吸収してしまったから減収になったので、客土をすれば処女土であるから、養分が充分保有されているから良い」と言うのであるが、これは甚だ誤りで、実は年々人肥金肥を施す結果、土の活力を失ったからで、客土をすれば肥毒のない為、土の活力が復活するからである。

 そうして堆肥の目的は何が為であるかというと、土を固まらせない為と土を温める為とである。作物の成育力を旺盛にする根本としては根伸びを良くする事である。それには土が固まらない事が第一で、それには堆肥を土へよく混ぜるのである。植物が根伸びの場合、末端の毛細根の伸びをよくするには、草葉の堆肥なら繊維が柔らかいから根伸びの邪魔にならない。ところが、木の葉は繊維が固いから土に混せるのは面白くない。床にして温める為に使うのがよい。理想的にいえば、草葉と土の混合土を一尺位の厚さにし、その下段へ同じく一尺厚み位に木の葉のみの床を作るのが最も良いのである。

 菜類、豆、その他あらゆる野菜はそれでいいが、ただ大根、人参、牛蒡等の如き根を目的のものは、土の層をその作物に適するよう加減すべきである。そしてなるべく高畝にし、根に対し日当りを好くすれば非常に成育がよいのである。薩摩芋の如きは二尺位な高畝にし、苗の間隔は一尺位にする時は、驚く程巨大な芋が出来るのである。よく畝を東西が良いとか、南北がよいとか言われるが、これは日当たりが目的であるから、その場所の日当たりと風向きを考慮して作ればいいのである。風当たりが強いと茎を折ったり土を飛ばしたりするから、これは必ず風除け林を作り、適当な垣等をなすべきである。

 原則として、土壌は清潔にする程活力が強くなるのであるから、糞尿の如き汚穢を土に施す時は反対の結果になるので、知らぬ事とは言いながら、実に労して効なしどころではない。マイナスにしていた訳である。又米国人は日本の野菜は絶対に食しないのは、勿論寄生虫を恐れるからで、無肥料となればその憂えがなくなるという、実にこれこそ農業の大革命で、吾同胞に対する一大福音である。

(「栄光」三号 昭和二十四年三月三十日)

 

 

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